Bio-Sもいよいよ終盤,得られた成果を生かして北海道「食クラスター」「健康科学産業」の構築をめざす
最後の1年間の課題とその成果をどう生かすか
Bio-Sもいよいよ最終年を迎えております。昨年度は中間評価で指摘を受けた食・機能性食品の開発に焦点を絞る、ヒト介入試験などの実施体制の整備や,人材育成,国際的連携の強化などといった課題もやり遂げ、その中で新たな組織構築として、ヒト介入試験や人材センター(江別)、高度脂質分析ラボ(札幌)、および抗酸化機能分析研究センター(旭川)等のセンター構想も浮かび上がってきました。この1年間、実用化に向けて個々の課題の成果を着実に挙げるのと同時に、その成果をBio-Sプロジェクトの終了後にどのように持続可能な状態にしていくのか、またその為の組織をどのように構築していくのかが今、焦眉の課題ともなっております。
北海道の強みを活かした「食クラスター」「健康科学産業」構築にむけて
上で述べたように、私達の目標は、それぞれのテーマを発展させその事業化を目指した確実な歩みを続けて行くことはもちろんですが,それだけでなく,そうした努力の集大成として,北海道に食を基盤とした新しい健康科学産業クラスターの構築に寄与して行くことがあわせて求められています。先般開かれた国際シンポジウムで紹介されたオランダのフードバレーなどの経験を学んで,多くの研究者と企業が集積して「もの」を生み出して行く,「日本版北海道フードバレー」ともいうべきクラスターの構築が今強く各界から要望されています。私達の努力と成果がその一助となれるよう,更に努力を積み重ねて行きたいと思います。機能性食品の産業としては約8千億円といわれていますが、サプリメントを含めると2兆円ほどの産業基盤があり、高齢化社会での健康長寿への人々の要求を考えれば、将来の更に大きな成長、イノベーションの期待できる成長戦略の要ともなる産業といえます。豊富な食資源と食に関する研究成果の蓄積という北海道の強みを最大限に活かすことで、地域振興の実現を目指すさっぽろバイオクラスター“Bio-S”の活動は、そうした北海道の健康科学産業の未来に大きな夢を与えるものと確信しています。
五十嵐 靖之
さっぽろバイオクラスター“Bio-S”研究統括
現代社会のニーズに応える3つの領域
全ての人に健やかな毎日を
Bio-Sが取り組む主要研究テーマでは、現代社会に暮らす私たちが、今まさに直面している問題に取り組んでいます。加齢や生活環境の変化によって衰えるこの3つの機能を強化改善することができれば、私たちのQOL(QualityofLife)はもっと高まっていくことでしょう。
Bio-Sでは、この現代的な人々の望みをバイオとサイエンスの力で叶えたいと考えています。
バイオマーカー探索と機能評価システムの構築、そして道内医系大学との連携による臨床データの獲得。北海道産素材の潜在力と私たちが開発する基盤技術によって、その展望は大きく開けて行くものと確信しています。
免疫・アレルギー改善研究 |
代謝機能改善研究 |
認知機能改善研究 |
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消化管機能評価による機能性食素材開発 北海道大学大学院先端生命科学研究院 教授 綾部 時芳 免疫バランス制御評価による機能性素材開発 北海道大学遺伝子病制御研究所 教授 西村 孝司 アレルギー・炎症反応評価による機能性素材開発 北海道大学大学院先端生命科学研究院 教授 五十嵐 靖之 |
糖質代謝改善作用をもつ機能性素材の開発 北海道大学大学院農学研究院 教授 松井 博和 脂質代謝改善作用をもつ機能性素材の開発 北海道大学大学院農学研究院 教授 原 博 抗酸化作用をもつ機能性素材開発 旭川医科大学医学部 教授 若宮 伸隆 |
認知症モデル動物によるバイオマーカー探索と予防作用機能性素材開発 札幌医科大学医学部 教授 小海 康夫 |
実用化研究 | ||
汎用的バイオ応用を目指した蛍光ナノポリマー粒子プローブの創製 北海道大学大学院地球環境科学研究院 准教授 山田 幸司 |
麦芽乳酸菌の腸管組織に対する生理活性の解明と健康食品開発 旭川医科大学医学部 教授 高後 裕 |
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共通基盤技術研究 | ||
機能性食品開発のための 基盤整備(共通基盤A) |
北海道情報大学医療情報学科 教授 西平 順 |
企業とともにマーケットを見つめて研究開発から製品開発・事業化まで
Bio-Sでは主たる研究機関である北海道大学、札幌医科大学、旭川医科大学において3つの領域ごとに素材の基幹研究から応用研究、実用化研究までのすべてのプロセスにわたって検証し、素材の高付加価値化と機能評価技術の集積と基地形成を図ります。これらの研究によって高機能化された素材が、道内外の企業や地域の力によって食材、食品、化粧品、医薬品原料として市場に提供されたならば、北海道発のブランドは高い安全性と信頼を獲得し、マーケットにおいてブランド力を高めていくことができると考えています。